2021 年6 月1 日付けで伝統ある長野県小児科医会の第8 代会長に就任いたしました。こども達の健やかなる心身の成長・発達を見守るために小児医療の改善、充実、発展に貢献します。
1979 年日本小児科学会は、小児医療全般にわたる医療体制の確立や充実には小児医療の改善を目的とする新たな組織が必要であると考え、日本小児科医会の創立を促しました。1984 年5 月に日本小児科医会が、そして同年10 月に長野県小児科医会が発足しました。2021 年6 月現在105 名の会員が県内各地域で活動しています(診療所開業医62 名、病院勤務医33 名、その他10 名、全員が日本小児科学会にも所属)。小児科医会の会員は多くが1 次医療に従事しています。高次医療は入院患者さんや重症児を扱う病院が担っていますが、1次医療の守備範囲は日常診療、予防接種、乳児健診、学校医・園医など幅広く、入院紹介・退院後フォローなど病院との連携も行っています。最近では地域に根ざし、気軽に診療・管理、健康相談ができる「小児かかりつけ医(医会で言う地域総合小児科医)」という言葉も一般的になりましたが、これを実践することが小児科医会会員のアイデンティティであり課せられた使命だと実感しています。
この30-40 年間に小児を取り巻く環境は大きく変化しました。長野県小児科医会設立当時の年間出生数(全国)は約150 万人でしたが、昨年度は新型コロナウイルス感染症流行が拍車をかけたせいもあり84 万人と過去最少に、そして2021 年度はさらに低下し72 万人とも予測されています。もちろん15 歳未満の小児人口そのものも激減しています。また、この間に量的な変化だけではなく、疾病(しっぺい)の質も大きく変わりました。治療法や薬の進歩、ワクチンの普及により急性感染症が減少し、アレルギー、学習障害、こどもの心の診療などの慢性疾患が増加しました。今後もこどもの貧困、病児・病後児保育事業、小児在宅医療・医療的ケアさらには移行期医療(思春期以降の成年期までを繋ぐ)、災害を見据えた小児医療など1次医療の裾野は広がりしかも多岐にわたるでしょう。時代や地域のニーズに応え医療を実践するためには今まで以上に、診療所開業医と病院勤務医の密接な連携が鍵となります。
長野県小児科医会員が一致協力し、「乳児健診を始めとする思春期までの切れ目ない親子サポートの実践」を活動の基本として2 年間の任期を全うする所存ですのでお力添えよろしくお願いいたします。
最後に、自身を振り返る鏡として日本小児科医会のホームページから会員章の栞(しおり)を記します。 八稜鏡の中央に「児」の篆字てんじをデザイン化して配置した。鏡は「手本・模範・戒いましめ」をあらわす。「児」はここでは「小児科医」のことである。そこに、子どもの幸福を願って日夜努力している真摯(しんし)な小児科医の姿をみていただきたい。それは誇り高く、永遠に光を失うことはない。(一部改変)( https://www.jpa-web.org/about/history.html )
令和3年6月吉日
第8代長野県小児科医会 会長
松岡 高史(まつおか たかふみ)